第4話


「行っちゃいましたねえ。」

 バンジが少し淋しそうに言います。

「ま、あいつならいい国建てると思うぜ。」

「何落ち着いてるんです。すでに一歩出遅れてるんですよ!」

「別に争う気はねえさ。」

 ラガットの後ろ姿を見えなくなるまで見つめています。

―何だかんだいって離れるのは淋しいんだな―

 バンジはそう思いながら苦笑すると、王子は言いました。

「あいつ、女連れねえでよく行く気になるよな。」

「何考えてんじゃ!」

 王子はメリーを見てふと、何かに気がつきました。

「ちょっと失礼。」

 と、メリーの腕を掴んで少しだけ、指に力を入れてみました。

柔らかい肉の下にはしっかりとした筋肉もあったのです。

「何かやっていたのか?」

「はい、弓を少し・・・。」

「何故?」

「弓兵に憧れて、アーチャーギルドで資格を取ったのですが、あまり仕事がなく、家計も苦しかったので・・・。」

「他に家計を助ける家族はいるか?」

「はい、一つ下の弟が・・・。」

「そうか、後でお前の実家の方にもわずかだが資金を送る。後で住所を教えてくれ。」

「はい。」

「しかし、こいつはいい。俺はついてるな。」

 王子もメリーに今までのいきさつを話しました。当然、メリーは驚いて口をあんぐりあけました。

「ただ、女が一人ってのも辛いな。まあ、バンジがくれば必然とついてくる女がいるがな。」

 と、王子はため息をつきました。その一言でバンジもはっとなりました。

「あの使えない女中が・・・。まあ、そこら辺にいるんだろ。出てこいよ。」

 王子がそう言うと、路地からメリーよりも更にぽっちゃりとした女中が姿を現しました。

「本当にいたのかよ。」

 呆れて王子が言うと

「いなかったら恥ずかしかったぞ、アンタ。」

 と、更に呆れてバンジにつっ込まれました。


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